大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和34年(く)103号 決定 1960年5月24日

少年 U(昭一四・一一・九生)

主文

本件抗告申立の理由は少年提出の抗告申立書記載のとおりであつて、要するに、少年が共犯者A、B及びCと共にH子をしいて姦淫しようと相談したのは現場に行く途中の自動車内ではなく、本件犯行現場に行つて自動車を降り、雨やどりをしていた際である旨主張し、原決定の事実誤認並びにその処分の著しい不当を主張するものであるが、本件記録(少年に対する昭和三十四年少第五六〇一号強姦致傷保護事件記録)を精査しても原決定の認定にかかる事実に誤認の疑はなく、(記録によれば少年は右Aらと自動車内において右H子をしいて姦淫すべき旨並びに右姦淫行為を決行すべき旨の順序につき相談の上、先ず少年においてこれを決行し、同女に対し全治約三日を要する処女膜裂傷の傷害を与えたことは明らかなところである。)また、右記録並びに少年に対する少年調査記録を精査検討し、少年の生立、性行、前歴、本件犯行の動機、態様、罪質、被害の程度、犯罪後の情状、その他家庭環境等一切の事情を考慮するならば、原決定の示すとおり、少年に対しては強度の矯正教育の必要があるものと認められ、この際適当な保護施設に収容して矯正教育を施し、その育成教化につとめ、健全な社会人として復帰せしめるのが相当と考えられるので、これと同趣旨に出た原決定はまことに相当であつて、これに対する本件抗告はその理由がないものといわなければならない。

よつて、本件抗告はその理由がないから、少年法第三十三条第一項に則りこれを棄却すべきものとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 坂井改造 判事 山本長次 判事 荒川省三)

(別紙) 抗告申立書

少年U

右の者に対する強姦致傷保護事件について昭和三四年九月二一日中等少年院送致の旨決定の言渡を受けましたが左記の理由に依つて不服につき抗告を申立てます。

昭和三四年一〇月五日

抗告申立人 U

東京高等裁判所御中

抗告の趣旨

ぼくは、相談してやつたのでないのに家庭裁判所では、相談してやつた者と、認められ中等少年院におくられました。

この点処分が重すぎると思いますので抗告申立てます。

八月十八日午後八時半頃僕はC、A、B君らと、盆おどりをみに行こうと出かけましたが、途中他の者は、自動車がないので行きそうにもみえなかつたので一人で○町へ本を買うためにさきに行きました。二・五キロ位来ると後からB、C、A、H子達が自動車できて乗らないかと云うので乗つて○町まで行きました。はじめは雷が鳴つてきたのでその辺を廻つて帰ろうと云う事になりました。

○川につくと雨が相当降つて来たので公園であまやどりをしていますと三十分位たちました。すると、C君が僕にH子をいたずらしようといいました。でもなかなか返事をしませんでしたがあまり云うのでいたずらする事にしました、しかし僕たちは○川に行く途中、車の上などでは相談などしませんでした。

審判の時、相談したと云いましたがうそです。審判の時は、むがむちゆうでわからなかつたのです。

家では、お母さんが数年の間病気でねています、僕がいないと家庭がひじように苦しいのです。

今一度こんかい限りはごかんだい願います。

高等裁判官殿

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例